信濃の国からこんにちは このページをアンテナに追加 RSSフィード

三崎隆です。
長野県長野市の信州大学教育学部で『学び合い』(二重括弧の学び合い)を研究しています。
「信濃の国からこんにちは」は私たちの『学び合い』研究室の研究室通信です。
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2009-07-05   ハードル

[] 15:59    ハードル - 信濃の国からこんにちは を含むブックマーク    ハードル - 信濃の国からこんにちは のブックマークコメント

学び合い』のライブ出前授業

 に出かけると,1回の『学び合い』授業であったとしても,子どもたちは目の前で大きく変容した姿を見せてくれます.もちろん,そのためには,何もしないで授業をしてもだめなので,『学び合い』ライブ出前授業の前に子どもたちにおまじないをかけます.おなじないというのは,今日はこんな考え方で授業をやりますよ」ということを伝えることです.いわゆる「授業前の語り」です.この授業前の語りは,先生方におかれては,年度当初にやったり単元の前にやったりしておられることでしょう.私の場合は,授業直前にしています.

このおまじないをかけたとしても

 3つの考え方のうち,子どもたちにすぐに伝わる考え方とすぐには伝わらない考え方があります.これは断言できます.「わからないことがあったら分からないって言ってどこが分からないのかを周りに伝えて教えてもらいましょう.皆さんには問題を解決しようとするだけの素晴らしい学ぶ力があるのですから,れを十分に発揮することを信じています」という学習者観と「分からなさは一人一人違うのですから,自分の分からなさにぴったり合致する教え方やヒントを提供してくれる友だちを捜して立ち歩きましょう.勉強は自分の分からなさとぴったり合致させてくれる教え方をもったベスト・パートナーと一緒に勉強したときが最もよく進むのです.今日はそんな授業です」という授業観はすぐに伝わります.

この二つの観(考え方)は,

 子どもたちにすぐに享受されて,あちこちで「分からない」「どうすればいいの?」という声が聞こえるようになります.「さあ,どうぞ」というと,分からない人は立ち歩き,分かった人は自分の解答の適否を確認しようと立ち歩き始めます.惚れ惚れするほど実に見事です.「分からない」「教えてよ」と言う言葉を発することは,学ぶ人間にとって「ばかにされるんじゃないか」「自分が勉強してないことをおおやけにするんだから,はずかしいなあ」と言う思いがありますから,結構ハードルが高いものです.まして,誰かのところに聞きに行くなどということは劣等感の塊のような感じがあって椅子を立ち上がる第一歩のハードルの高さは,経験したものでなければ分からないものです.ですから,それを軽々と実行に移す子どもたちというのは,それだけ,学ぶ力が凄いということの証でしょう.変に対面を気にしたりまわりを気にしたりする大人よりも,いや,大人以上にずっと凄い力を持っていると言っても過言ではありません.だから,授業者は,それをもっと信じてあげてほしいと『学び合い』ライブ出前授業をする度に強く感じて止みません.

ところが,『学び合い』の考え方による授業で

 最も大切な3つめの考え方はなかなか子どもたちに伝わりません.先の2つのハードルよりも,ずっとずっと高いハードルです.3つめの考え方のハードルが一番高くて,やっかいだということをいかに真摯に認識できるかが,『学び合い』の考え方による授業の成否を握っているといっても過言ではありません.超えるのに最も苦労するハードルが,「学校というところは,問題を解決するためには分からないことを聞いたり分かったことを教えてあげたりすることが最も有効な手だてであって,それによってみんなでみんなができることを目指すところなんだ.学校はそれを学ぶところなんだ」という学校観です.

この3つめの考え方は

 子どもたちがこのような考え方を享受しているかどうかを見極めにくい点があるから難しいとも解釈できます.だいたい,先生方が『学び合い』がうまくいかないと悩む根源は,この3つめの考え方が子どもたちに享受されていないことによります.まず十中八九間違いありません.いや,99%間違いありません.悩んだり困ったりしている先生方のその悩みを聞いてみると,もっとみんなでみんなができることを伝えていただければ解決できるのになあと思うことだらけだと言っても過言ではありません.授業者として,なかなか本気で求めにくいという弱さも相まって子どもたちに伝えにくいのも事実です.毎日毎日,みんなが大切だ,今日もみんなでみんなができることを目指そうと言い続けることができますか?しかし,それが『学び合い』で一番大切なことなんですが,それがなかなかできないようです.

自分が目標を達成してしまうと,

 そこで活動がストップしてしまう子どもたちがいかに多いことでしょう.先生方もそのような子どもたちには発展的な課題を用意してそのような子どもたちに対応しようとします.その方法が,できる子をもっと伸ばす良い方法だと思っているからです.子どもたちにとっても自分が目標に達成できたら安心しますし,周りの子どもたちと関わりながらやるより,遊んだり寝ていたりした方が楽ですから.そのような考え方は,「みんなができる」ということを一人一人が個別に頑張ってみんなができるようになろうというように解釈していることによります.間違っていはいませんが,『学び合い』を志向するときにはこのような考え方ではありません.そのような考え方をしている集団全体に対して,『学び合い』授業者はそこをつっついてほしいのです.それが本当にみんなでみんなができることなのだろうかと.『学び合い』は「みんなができる」ことを一人一人が個別に頑張るのではなくて,みんなで協力しながら頑張るという考え方に立つものです.したがって,みんなで(関わり合って協力しながら)「みんなができる」という考え方を子どもたちに徹底して求めることが肝要です.

ハードルが高いのは,

 一つには,授業者がどれだけ真剣に学校観を子どもたちに求めていくかによります.「自分だけできれば良し」という考えかたを「みんなでみんなができる」という考え方に変えて行くには授業者の意識のハードルの高さが要求されます.目標が達成できた子に発展的な課題を用意しなければならないんじゃないかという迷いが生じることもその一つです.毎日毎日同じことを言い続けることに対する戸惑いもその一つでしょう.「1回ぐらい(あるいはこの教科ぐらい,この単元ぐらい,今日の授業ぐらい)見逃しても(みんなでみんなができることを強く求めなくても)なんとかなるんじゃないか」という気持ちの表れもその一つです.子どもたちは教師の心の中の見透かすように見抜いてしまいますので,「自分だけできればいいや」「みんなができなくたって自分さえできてれば,(先生にも個人的には怒られないしテストは点数取れるし)なんとかなる」となります.みんなでみんなができるようになっていなければなんともならないことを,みんなができるまで繰り返すことができますか?その覚悟,強い意志があれば,それが子どもたちに伝わってハードルを越えることができます.

3つめの学校観のこのような考え方が

 子どもたちに享受されているかどうかで,『学び合い』の考え方による授業がうまくいっているかうまくいっていないかの判断が付くのです.成否の分かれ目と言ってもいいでしょう.『学び合い』か学級崩壊かの見極めは,できる子がどのように動いているかだといわれますが,まさにそれです.目標を達成し終わった子が遊んでいたり寝ていたりする学級崩壊では,一人一人ががんばってみんなができることを目指しているのですから,『学び合い』が起きることはありません.できる子が目標を達成し終わったら周りの子どもたちと関わり合ってみんなでみんなができることを目指している様態が『学び合い』の姿です.出来る子が遊んでいれば,学校観の考え方の伝え方が十分ではないと言うことです.出来る子が遊んでいるまでもなく,「自分ができればいいや」という態度や行動を示していたり,それほど極端でないにしても「自分がわざわざ出来ない子や分からない子への関わり方など気にしなくても,先生が何とかしてくれるだろうし,誰かがなんとかしてくれるだろう」という発話や行動が表出しているようであれば,『学び合い』の学校観が子どもたちに享受されていない証拠だと考えていただいて間違いありません.

この3つめの学校観の考え方を

 子どもたちが享受するためには繰り返し繰り返し,みんなでみんなができることが大切であって,今日の授業では本当にみんなでみんなができることが達成できていたかどうかをリフレクションして子どもたちに考えさせてあげることが大切です.『学び合い』がうまくいっていない場合,必ずと言っていいほどこの3つめの学校観の考え方が子どもたちに享受されていない場合はほとんどです.それだけ,この3つめの学校観の考え方を享受してもらうハードルが高いということです.『学び合い』で一番苦労するところは,いかに子どもたちに3つめの学校観の考え方を享受させるかということにあると言っても過言ではありません.

o4dao4da2009/07/05 23:49先日、N先生に「結局学び合っていない」と教えていただきました。そして改めて上記の内容がじっくり心にしみてきます。方法ではなく、大事な考え方を(できない個にではなく)できる子に語って勝負していきたいです。よい気づきありがとうございました。

OB1989OB19892009/07/06 06:18o4daさん,コメントありがとうございます。師弟関係がずっと続くというのは,見ていてうらやましいものがあります。o4daさんもN先生も魅力を持っていることの証であることに帰着すると思われます。N先生に応援されたo4daさんの実践が注目されます。

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