西川純のメモ このページをアンテナに追加 RSSフィード

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04/07/21(水)

[]天狗の鼻(その3) 08:20 天狗の鼻(その3) - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 天狗の鼻(その3) - 西川純のメモ 天狗の鼻(その3) - 西川純のメモ のブックマークコメント

 蛇足ながら、分からない人も多いと思うので、天狗の鼻(その2)の簡単な(本当に簡単な)種明かしをしたいと思います。

 あのレポートを書いた先生は『けっして面白い実験ではありません。同じような操作を繰り返して測定するだけのものです。それを実に楽しそうに行っているんです。うまく言ったと言っては笑い、失敗したと言っては笑い。』と書いていました。また、『「最近、理科の時間が面白いです。実験が多いし、みんなでやっていると楽しいです。」と。  私はそれまでも、実験中心の授業でしたが、そのように書かれたことはありませんでした。 』と書いていました。そして、そのことをとても不思議がっていました。この先生は、理科教師が理科の授業で冒しがちな過ち(そして国語教師が国語の授業で冒しがちな過ち、そして社会科教師が・・)を冒しています。

 第一に、自分が面白いと思うものと、子どもが面白いと思うものが同じだと思っています。本当は、その道の専門家と、初心者では見るもの聞くものは違うし、興味・関心の対象が違います。しかし、どうも自分が面白いものは、他人も面白い(面白くあるべき)だと誤解しているようです。教師には陳腐に見える実験であっても、子どもにとっては新鮮な実験の場合は少なくありません。だって、試験官を振るだけでドキドキしている子は少なくありません。

 第二に、子どもはその教科を学ぶという意味以上に、人と関わるということを目的にしています。このことは自分の学校時代を思い出せば、あたりまえすぎるほどあたりまえなんですが。我々は何を楽しみに学校に行ったでしょうか?国語・社会・・・を学ぶことを楽しみに学校に行ったでしょうか?逆に、悩んでいる子どもは何に悩んでいると思います?でも、教師になると忘れてしまうんですね。

 特に、第二の点が重要なんです。その先生のクラスに起こった変化の本当の原因は『以前と違うのは、一挙手一投足にいたるまで考え、生徒達にも細かく指示を与えていたのが、「はい、やろうね。わからなければ教科書を見て、班の人と相談して」と生徒達に任せるようになったことです。』からなんです。子ども達が、互いに関わることが出来るようになったからです。そして『生徒達だけでいろいろな話が決められ、進められ』るようになったからなんです。

 その先生は『多少、面倒くさくなっていたのかもしれません。』と謙遜されます。しかし、違うと思います。単に放り出したならば、子ども達は遊び出すはずです。ところが、子ども達が勉強に向かったのは、その先生が3年間かけて子ども達に目標を与えていたからだと思います。そしてクラス集団を作ったからだと思います。素晴らしいことです。その先生は、熱意があり、力のある先生だと思います。このことをちゃんと分かっていれば、もっと凄いことが出来たと思います。そして、もっと早く子ども集団を変えることが出来たはずです。逆に、上記のことを分かってもらえなければ、もう一度、同じ状況に陥った時、また、同じような対応をするでしょう。そして、私はその先生に、上記のことを伝えることが出来ませんでした。だから、自分の無力を恥じます。上記のことを、一人でも分かってもらいたいと思い、可視化します。

追伸 もしかしたら、その先生がこのメモを読んでくれるかも知れません。そして分かってもらえるかも知れません。