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私立の中高一貫校で国語を教えています。

2011-07-11

アメリカの学校でみつけた素敵な実践 ~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~ 07:23 アメリカの学校でみつけた素敵な実践  ~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~ - 『学び合い』の文化を教室に を含むブックマーク はてなブックマーク - アメリカの学校でみつけた素敵な実践  ~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~ - 『学び合い』の文化を教室に アメリカの学校でみつけた素敵な実践  ~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~ - 『学び合い』の文化を教室に のブックマークコメント

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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」

                113号 2011年7月10日発行

                      (毎週火金日発行)

http://www.jugyo.jp/

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★目次★

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1.アメリカの学校でみつけた素敵な実践

~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~

「インクルージョン」編集委員

  川崎市立下河原小学校/早稲田大学大学院教育学研究科 池田 康子

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 初登場、池田康子さんの登場です。「特別支援教育」に関わる様々な著

書、雑誌論文などで、読者のみなさんにも既におなじみなのでは、と思い

ます。セルフライフヒストリーアプローチ的な要素も加味していただきま

した。じっくりとお読みください。           (石川 晋)

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1.アメリカの学校でみつけた素敵な実践

~通常学級の中でも計算方法を選択できる・学力定着のためのしかけ~

「インクルージョン」編集委員

  川崎市立下河原小学校/早稲田大学大学院教育学研究科 池田 康子

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1.はじめに

 今、私はアメリカの小学校のことを他の人よりほんの少し多く知ってい

る存在になっているが、偶然が重なったことがきっかけとなっている。

やってみたいことを思っているだけでは気が済まず、一つ一つ実現させ

ていきたい性分で、時間とお金のやりくりは必要であるが、チャレンジし

続けている。16年前には、どうしても英会話を学びたくなった。当時担

当していた自閉症の子どもの保護者から「英語を取り入れた学習をしてほ

しい」との要望があり、NHK教育テレビの「英語であそぼ」(現在の「え

いごであそぼ」)の月刊誌をテキストにして少しずつ英語の学習を進めて

いたこと(他にいい方法はないかなあ!)、その子どもが見事な発音で英

語を話すこと(発音も学びたい!)、たまたま行った海外旅行の添乗員さ

んがそれはそれは行く土地土地で英会話を楽しんでいたこと(こんなふう

に楽しめたらいいなあ!)、そして会話ができないといい買い物ができな

い国だったこと(英語が話せた方がもっと旅行が楽しめる!)が重なり、

英会話学校に通うことにした。他に人がいると頼ってしまうことを懸念し、

マンツーマンレッスンからスタートした。

 このようなこともあり、海外に行くと言えば初めはただの旅行であった

が、物足りなさを感じるようになり、学んだ英語を試すために、生活に触

れるホームステイや語学学校に行くことを選ぶようになった。様々な国か

ら集まったブリスベンの語学学校では、各国のお化け談義に大爆笑するな

どお遊び的であるが、人とふれあう中で、文化の違いが面白いことを楽し

んでいた。また、「兵役が終わったから就職のために英語を学びに来た」

「今は大学生だけど、卒業後はアメリカでダンサーになりたいから英語を

勉強したい」といった夢の実現のために必死で学ぶ姿や英語を学ぶために

やってきた中学生の勇気に感動することもあった。一方で「日本人はいつ

も日本人で集まっているから英語の上達が遅いのよ。」とホストマザーか

ら言われ、またワーキングホリデーのためにやってきたのに語彙の少なさ

から泣き出したクラスメイトの姿を見て、甘い日本人に情けないなあと思

い、自分に渇を入れ直すこともあった。ぎくしゃくしていたホストファー

ザーと仲良く慣れたのは、「トンカツ」を作ってごちそうしたことがきっ

かけであり、世界で人気の日本食をありがたく思った。

現地の学校に行ったのは偶然のことで、ある年、シドニーに行ったとき、

ホストマザーが高校の先生だったからである。年休がたまりにたまって、

そのたまった年休を使って羨ましいことに1年ほど休みを取っているとい

う方であったが、勤めていた高校に案内してもらえた。高校の中に特別支

援学級があり、日本と同じように個別の課題で学習をしていた。普通高校

に特別支援学級があることにもびっくりしたが、さらにびっくりしたこと

があった。就職をした後でも「もう少しお金の学習をしたい」という理由

で、数学の時間に学びに来ている特別支援学級の卒業生もいたのである。

日本にはない制度で、どれも日本にもあるといいなあ、と思うとともに、

このようなやり方だってできるんだ、と思った。日本と違うやり方に出合

うことで視野や考え方を広げることができる。他の国の学校にも行ってみ

たいと思うようになった。

 友人と行くツアーもちょっと技ありのものを選ぶようになった。例えば、

「タイの高校で日本語アシスタントティーチャーをしながらホームステイ

をする」ものである。のんびりリラックスというツアーではないので、働

いた分だけ疲れるが、何倍もの自分への土産ができる。

 海外で得た情報や体験したことを紹介できる機会があった。当時の勤務

校で特設していた選択授業の中で、「世界の国々」の学習を担当し、体験

を通して子ども達にいくつかの国の文化や食べ物について紹介した。

 英会話学校では、ゲームやアクティビティがたっぷり。こんな楽しい方

法があったのかと英会話の授業の中でも、授業のアイデアをもらうことが

できた。

 とにかく海外に出ると面白い。カルチャーショックを受ける度に、日頃

当たり前になっている日本の便利さに感謝したり、日本の良さを再確認し

たりできる。仕事と同じ学校を訪問をすると、日本の教育について考えさ

せられる。タイの高校のように、生きて役立つ英語の方がいいし、小学生

とも会話できるのはタイの小学校で使える英語を習っているからだ。日本

の教育の中に、タイのやり方を取り入れられないのか?などと思ってしま

うほど、日本にいては気づかないことに気づかされる。

 ここ10年間はアメリカの学校を毎年訪問している。

 それまでアメリカで学ぶ予定はなかったのだが、与えられた3年間の日

米交流の機会のおかげである。テレビ会議で話すだけではよく分からない

ので、交流を始めたその年に訪問してみることにしたのである。「アメリ

カに行ってみよう」と言い出せたのは、英会話に抵抗がなく、ホームステ

イや学校訪問の面白さを実感しているという、これまでの経験があったか

らだと思う。実際に授業を見て、思っていた以上の発見があった。

・何と言っても特別支援教育が進んでいること

・音楽科は指導者にもよるが日本の方が充実している(楽器の種類や音色、

 歌唱指導等)

・通常学級の先生は、国語算数理科社会だけの少ない教科を指導し、同じ

 学年を10年など長い期間もつことが多く、教材研究がばっちりである

 こと

・体育では軽運動を取り入れ、苦しまずに楽しむ中で体力をつけているこ

 と(パラシュートやローラースケートの授業にびっくり!)

・キャリアガイダンスの授業があり、夢を実現させるために何が必要かを

 1年生から学んでいること

 最初の訪問では平等に全クラスに入り、日本文化の授業をしたことで一

度に多くの授業を見ることはできなかった。その中で、訪問団4人で分か

れて見ることで情報が集まり、訪問回数を重ねるごとにリクエストし、実

際に授業を見ることで学ぶことが増えた。前置きが長くなってしまったが、

今回はその中からちょっと素敵な2つのことについて紹介する。

2.いちばんやりやすいやり方でOK

(1)多様なやり方の紹介

 アメリカの通常学級の4年生のかけ算。T先生は、3桁×1桁のかけ算

のやり方を3種類紹介する。教科書にも掲載されている。1つめは日本で

使われている筆算、2つめは分解してかけ、最後に足す方法、3つめは格

子乗法の3種類である。

 1.日本で一般的なやり方

  皆さんご存知の方法なので、こちらは省略する。

 2.分けてかける。その後合計を出す。

  計算の意味を理解しやすい。

345×6=300×6=1800

  40×6= 240

  5×6=+  30

2070

答え2070

 3.格子乗法

 こちらは、図表もありますので、下記URLでご確認ください。

 http://homepage1.nifty.com/maru-shin/ikedayasuko.pdf

  覚えたかけ算九九をそのまま枠内に書くことができる。記憶にとどめる

必要がなく書ける点がよい。「1」の日本で使われているやり方よりも少

し易しい。

(2)自分に合ったやり方が選べる

 やりやすい方法を選んでよいので、子ども達の大多数は「3」の格子乗

法で計算する。

 自分がやりやすい一つのやり方を自分で選ぶことができる点がよい。こ

れで救われる子どもは多いかと思う。

(3)新たな方法は誤学習した子どもに対して仕切り直しの手段の一つ

 日本においては『特別支援教育 はじめのいっぽ 算数の時間』(井上

賞子、杉本陽子著、Gakken) http://www.amazon.co.jp/dp/4054042759/

等に掲載さているように、筆算の中に補助枠を作り、メモができるように

する方法や色づけする方もあり、通常学級において取り出しや入り込みの

支援が必要な子どもが使っている。しかし、その数字を足すのか引くのか

かけるのかがごちゃごちゃになってしまった子どもにとっては、格子乗法

のような全く新しい方法の方が別のやり方として入りやすい場合もある。

(4)特別な支援を要する子どもに分かりやすいことは誰にでも分かりや

すい方法

 格子乗法を使うことは特別な学習か?この答えは以前はYesだったが、

今はNoである。

 特別な支援を要する子どもにとって分かりやすいことは、通常学級に在

籍する児童にとっても分かりやすい。数年前には、「簡単な方法があるの

よ。」と言って、発達障害児対象クラスの担任になったばかりの先生から

紹介された方法が、通常学級の教科書に掲載され、活用されているのであ

る。この柔軟な体制も素敵である。

(5)視覚的なわかりやすさ

 こんな簡単な方法があったのか!とびっくりしたものはかけ算だけでは

ない。わり算たし算引き算にも意外で視覚的に分かりやすい方法がある。

詳細は拙著『続 特別支援教育 手軽にすぐに使える教材・教具集』(学事

出版)を参照していただきたい。 http://www.amazon.co.jp/dp/4761916508/

(6)子どものやり方の引き継ぎが大事

 日本で導入する場合、子どもや保護者の了解を得て、特別支援学級や特

別な支援を要する子どもの指導に使うことは比較的簡単にできるかと思う。

中学校への移行時期には、中学校の先生にそのやり方を伝え、指導を引き

継いでいただく。ただ、通常学級で学習する子どもには、教科書のやり方

と違うことから、導入や引き継ぎが難しいように思う。

3.通常学級の算数にも工夫がいっぱい

(1)少しずつ復習できるから忘れない

 訪問している学校では、「Everyday Mathematics」を教科書として使

用している。これがよくできている。

 日本の教科書では、いくつかの単元の学習をした後に、まとめのような

ところで復習ができるが、久しぶりにやってみると、忘れていることがあ

る。アメリカのこの教科書には学校用と家庭用のワークブックがあり、こ

こでは、毎日各単元を1~2問復習できるようになっている。毎回少しず

つレベルがアップしたり、問題の出し方を変えたりしている。

 州の共通テストは一大イベントであり、課題を早く終えた子どもが、そ

の隙間時間にパソコンに向かって復習問題に取り組むこともしていた。こ

れも学習したことを忘れないシステムになっている。

 日本でも、この学年でこれだけは身につけさせたいことは、計算タイム

や読譜タイム、リズムタイム、漢字タイムのような帯単元で、毎回短時間

取り組んでいるかと思う。しっかりと力をつけたいことがここまで明確に

なったワークブックだと、学習したことの中で大事なことを忘れないで積

み上げをすることができる。

(2)多様なアプローチ、細分化で飽きない学習

 毎日60分~90分、国語と算数の授業がある。日本より随分国語算数

の時数が多い。1時間の授業が長いので、60分や90分を細分化し、子ども

達が飽きないように力をつける工夫がみられる。

 1年生の授業の例を紹介する。

<数の学習の例>

1.「57」の構成について、10のかたまりを表す棒と1のバラで表

す(一斉)

2.ワークブックで練習問題(個人)

 3.この後のアクティビティとペア発表(一斉)

 4.各アクティビティ(ペア学習)

  ・数字カードを2枚引き、二桁の数字を作る。2人で対戦。大きい数

   を出した方が勝ち。

  ・100のマス目に1から順に数字を書く。100まで終わると、次

   の用紙に101から200までを書く。書いた用紙をつなぎ合わせ

   る。

  ・時計さいころのビンゴゲーム 他

 毎年参観しているのが1年生のA先生のクラス。ゲームやアクティビテ

ィがたっぷり。

 ゲームは教科書に掲載されており、教科書にゲーム用の付録もついてい

るから簡単にできるとのこと。

4.終わりに

現在、学んだことを実践したり、必要としている先生方に紹介したり、

学校説明会・報告会で指導法の一部を紹介したり、学会で研究を発表した

りしている。アメリカの学校訪問も、1回1回テーマをもって訪問してい

る。前回は通常学級の1・2年の算数の授業の中でMultisensory teaching

(複数の感覚を同時に使用する指導)がどれだけ活用されているかを探る

ことであった。次回は、発達障害児対象の私立の学校を訪問し、算数の授

業を中心に見せていただいたりお話を聞かせていただいたりしようと思っ

ている。日本にないことだから面白い。面白いからこれからも挑戦は続く。

授業づくりネットワーク誌の最新号

http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html

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【編集後記】

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 『授業づくりネットワーク』2011年1月号の第二特集は、「越境する教

師~新たな自己啓発」でした。この中には、もちろん池田康子さんもご執

筆されています。

http://www.amazon.co.jp/dp/B004CMBBT6/

 この特集の提案原稿として、上條晴夫さんは「同僚性と越境性」という

キーワードを立てておられます。上條さんは「『同僚性』による職場から

の改革と同時に、『越境性』がもっと意識されてよい」と述べています。

 池田さんの原稿を拝読しながら、まさに「越境する教師」の姿を見る思

いがしました。流動化する社会と当然ながら教育も無縁ではあり得まない。

そういう現実とも重ねながら読ませていただきました。

 発行、少しだけ遅れました。お許しください。

 次回火曜日発行の114号は、ワークショップチームから、大橋邦吉さん

が初登場です。「教室ファシリテーション」のご提案でみなさんももうご

存じの方なのではないかと思います。どうぞお楽しみに。

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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」

第113号(読者数1709) 2011年7月10日発行

編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)

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編集部ではチームに分かれてMLによって原稿検討を行っています。本

メールマガジンの記事を読んでいただいた率直なご意見・ご感想をいただ

けると幸いです。本メールマガジンの内容に少しずつ反映をしていきたい

と考えています。

 編集長:石川晋

 副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之

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scorpion1104scorpion11042011/07/11 21:27とても、とても参考になりました。
ご紹介ありがとうございました。

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