『学び合い』の文化を教室に このページをアンテナに追加 RSSフィード

私立の中高一貫校で国語を教えています。

2009-02-10

堀兼小学校の公開授業に行ってきました。その2 00:11 堀兼小学校の公開授業に行ってきました。その2 - 『学び合い』の文化を教室に を含むブックマーク はてなブックマーク - 堀兼小学校の公開授業に行ってきました。その2 - 『学び合い』の文化を教室に 堀兼小学校の公開授業に行ってきました。その2 - 『学び合い』の文化を教室に のブックマークコメント

いわせんさんのクラスの授業の様子の続きです。

僕がお邪魔させていただいたのは、女の子4人組。

「時をさまようタック」という本を読んでいるグループでした。

時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋)
時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋)Natalie Babbitt 小野 和子

評論社 1989-12
売り上げランキング : 242129

おすすめ平均 star
star美しく切ない物語
starこれは泣けた
star不老不死ー極楽それとも地獄?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

リテラチャーサークルというのは、いただいた資料によると、4人がそれぞれに役割を分担し、毎回その役割を交代しながら本を読み進めていくものだそうです。

しかし、今回はそのさらに発展型として、役割は固定せずに、それぞれが読んで持った感想を持ち寄り、読みを深めていこうというものでした。

今回は19章と20章を読んでおいて、その内容を話し合うことになっていたようでした。

まず目についたのは、彼女たちがひざの上に置いていたノートでした。

最初のページに、読者の心得のようなもののプリントが貼られています。ときどきそれを見ながら話し合いに参加している人もいました。

また、見開きのページの左ページの上側に、付箋をきれいに並べて貼り、周りをペンで囲んで、「思ったこと」などと分類していました。

どうやら本を読みながら、その場で考えたことを付箋に書いて貼っていくというのが約束になっていたようです。

そうしたことを感じましたので、帰ってきてから学校の図書館で「時をさまようタック」を借りました。そして付箋を貼りながら読むという方法を試してみました。

一時期、付箋を使った情報整理術にはまっていた時期があったので、懐かしく思い出しつつ読んでいきました。

なんだか、一読総合法にも似た手法ですね。

 八月のはじめの一週間は、とまった観覧車のいちばん上のシートみたいに、夏のてっぺんにひっかかった時間。長い一年のてっぺんといってもいい。その前の数週間は、おだやかな春から夏に向かうのぼり坂だし、そのあとの数週間は、すずしい秋へむかうくだり坂だけれど、八月の第一週はじっとしてうごかない。ただ暑いだけ。それに、みょうにしずかだ。ぼんやり白い夜明け、じりじりとてりつける日中、どくどくしい色でぬりたくられる暮れがた。ときどき、稲光が夜の空でピカッと光るけれど、ひとりさびしくはしるだけで、雷も救いの雨もついてこない。きっとあとで後悔することをしてしまいそうな、おちつかなくて息ぐるしい真夏の日々。

 この書き出しが実に印象的です。八月のはじめの一週間を、とまった観覧車の一番上のシートにたとえたのはなぜなのでしょう?僕の中では一番楽しい時期というイメージがあります。古くは北海道でのキャンプの始まりの時期であり、今はディベート甲子園の始まりの時期だからでしょう。

 でも、こうした時期の設定が、その後の事件に必然性を与えてもいるのでしょうね。

 そんな風にして付箋をペタペタ貼りながら読み進め、やっと彼女たちが話し合いをした19章と20章に行きつきました。

 タック家の4人は不老不死です。その原因はウィニーの家のものである森の中の泉の水を飲んでしまったことにあります。そのことを突き止めた黄色い服の男と、タック家の4人が対決するのが19章です。

 この物語の中で、もっとも緊迫感が高まる場面です。

 まずそのところまでのあらすじをざっと確認して、話し合いは始まりました。

 一番大きな問題は、タック家のみんなと、黄色い服の男との「不老不死」に対する考え方の違いでした。

 僕のようなでかい図体の人間が、しゃがんで耳をそばだてているのですから、最初はかなり緊張していたようでした。全員が積極的に話し合いに参加するというより、二人くらいが話をして、時々話題を振られた他の子が、ポツリポツリと話を継いでいくという感じでした。

しかし、よく発言していた子が「永遠の命を持つことのよいことと悪いことはなにか」というテーマで、ちょっと抽象的な話に入っていってしまいました。世界の終わりまで生きるとなると、生きることに飽きてしまうのではないか、という観点から永遠の命を持つことはよいことではない、という意見をだしたのです。

たしかに文章の中にも、それに似たことは書かれています。が、そこがメインかどうか、そしてそれでみんなが納得できるかなと思っていると、ポツリポツリと話の穂を継いでいた子が、「1000人いたとして、自分だけ不老不死になって、999人が死んでしまったら」という話を出してきました。これはかなりわかりやすい話で、ここで一気に「不老不死」の悪い面がしっかりと共有されたと感じました。

 僕はずーっと死ぬことが物理的な圧迫感に感じるほどにこわくて仕方がない人間でした。ですから、小学校6年生が、「不老不死」を悪いものと価値づけていることに最初は非常に違和感を感じました。

 僕はまぎれもなく、黄色い服の男の側に立った考え方をする人間だからです。

 

 でも、彼女たちは今までの話し合いを通して、タック家の立場に共感しながら読書を進めてきたのですね。もちろん、この本をきちんと読んでくれば、そういう共感を持って読んで当然です。

 ウィニーも自分がいつかは死ぬということをタックに示されて、声を上げて拒否します。

 でも、混乱の中で、だんだんとタック家のみんなが抱えている「死ねない」という苦悩を理解し始めます。

 そうした主人公の変化に寄り添いながら、読み進めているのだなあということがよくわかりました。

 そして話し合いの雰囲気が実によかった。みんながそれぞれを思いやりながら、話をしていることがわかりました。

 僕がディベートを始めたきっかけは、テレビでとある塾が取り上げられたのがきっかけでした。

その塾では、丸山 真男の「日本の思想」を高校生たちが読んで、討論をしているのでした。

 その姿に憧れて、そんな生徒を育てたいという願いを持って始めたのがディベートでした。

 彼女たちの姿には、そんな僕が憧れた高校生の姿がオーバーラップして見えました。

「宴たけなわではありますが、時間です。」といういわせんさんの言葉で、25分という時間が過ぎたことがわかりました。あっという間の25分間でした。

「話し合いを巻き戻して、今日の話し合いがどうだったかを振り返ろう。ちょっと2分ぐらい振り返ろう。グループごとに、どうぞ。」

「慣れるまで緊張した」「見ないようにしているんだけど、チラチラ見ちゃうんだよね」「参観日みたいにね」「ちょっと気にしてた」「後半からはだんだん慣れてきた」「でも今回はよくしゃべれたと思う。メイがさ、いい場面だったから」「今回はいい話し合いになったと思うよ」

「で、今度は7回目?だから、21から24じゃん?いい所だから、もっといい話し合いができるよ」

 いわせんさんも子どもたちに「チームとして成長したと思うよ」などと優しく声をかけているのが印象的でした。

 まとめに入ると、椅子を机にしたりしながら、各自のノートに今日の話し合いについてまとめていきます。10分という時間ですが、みんな集中してひたすら書き続けています。

 話し合いの内容だけでなく、どんな話し合いだったかという点についても書いているのでまた驚きました。

 リテラチャーサークルだけでなく、日頃の様々な活動を通して培ってきた力なんだろうなと思わされました。

 今日は時間がなかったため、ノートをその場に置いて下校ということでしたが、普段は時間が過ぎても書き続ける子がいたり、書いたものをお互いに読み合ったりもしているようでした。

(つづく)

体制の見直し 17:17 体制の見直し - 『学び合い』の文化を教室に を含むブックマーク はてなブックマーク - 体制の見直し - 『学び合い』の文化を教室に 体制の見直し - 『学び合い』の文化を教室に のブックマークコメント

3月28日の『学び合い』入門セミナーへ向け、体制の見直しを迫られている。

とにかく、人が足りない。事務局で当日動ける人をもっともっと確保しないと。

ということはつまり、まだ東京では『学び合い』を広めていく充分な素地があるということにもなる。

腕が鳴るじゃあありませんか。

そういうわけで、手伝えるよ、という方、ご連絡待ってます。

janglejapjanglejap2009/02/10 17:59手伝います。本当は打ち合わせから行きたかったのですが・・・。
一緒に行く先生も、セミナーは群馬に続いて2回目なので講座のほうはしっかり聞きたいけれど、それ以外のところでお手伝いできることはやります、と言っています。
よろしくお願いします。

ikutosuikutosu2009/02/10 22:21>janglejapさん
ありがとうございます!
一気にお二人も名乗り出ていただいて、心強いことこの上もありません。
どうぞよろしくお願いします。
別にメールをしますね。

iwaseniwasen2009/02/12 21:33『時をさまようタック』、読んでくださったのですね。ボクはこの冬に今回のブッククラブの選書(テーマは『映像化された作品」でした)のために30冊ほど目を通し、ようやく見つけた作品の一つです。
2学期に学年全員で読んだ『テラビシアにかける橋』とテーマが重なることも選んだ理由の一つでした。
さて、このチームは決して読書が得意!という訳ではなく、むしろ6年生になって「初めて読書するようになった!」「それまで本を読むと目が回った!」という子がほとんどのチームでした。
1回目、2回目はどうしても、本のテーマを深める話し合いに行かずに枝葉末節なところに話が行ってしまいがちでした。少しずつ話し合いが変化してきているのを感じています。
何度も何度も再読したようです。

ikutosuikutosu2009/02/13 08:05>iwasenさん
30冊も目を通されたというところがびっくりです。
実際に手に取って、「これだ!」という本だから、子どもたちも食いついてくるのでしょうね。
我々は、つい本を早く読むとか、沢山読むとかいう所に目を奪われがちですが、子どもたちの読書って、そうじゃないんですよね。
うちの長男は「ハリーポッター」シリーズを暗記するほどくり返し読み込んでいます。そんな風に本を読む好奇心と、時間が彼らにはあるんですよね。

この経験は彼女たちにとって一生の財産ですね。

お気に入りに追加