信濃の国からこんにちは このページをアンテナに追加 RSSフィード

三崎隆です。
長野県長野市の信州大学教育学部で『学び合い』(二重括弧の学び合い)を研究しています。
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2009-02-18   戸惑っている人へ

[] 06:12    戸惑っている人へ - 信濃の国からこんにちは を含むブックマーク    戸惑っている人へ - 信濃の国からこんにちは のブックマークコメント

「子どもが、『何をするのか。どうすればいいのか。どこまで到達すればいいのか。』を具体的にイメージするための留意点は何か

 行動心理学が隆盛であった頃に盛んに試みられた「行動目標」をイメージすると理解が促される可能性があります。『学び合い』の実践では本時の最後に到達すべき目標を分かりやすく伝えることが重要です。そのための手順は,

①まず,教師用指導書に記載されている一般的な「本時の目標」を確認する。本時の目標=本時の主眼(長野県)≒本時の課題として,教師用指導書に示されている「本時の目標」は,全員が達成すべきものとしてどこまで到達させればよいのかを検討する上で,参考にするに値する。本時の目標は,全員が達成すべきものとして考えることを最優先する(3分の2ほどの子どもたちが達成すれば良しとすることは避ける)ので教師用指導書で十分である。

②全員に分かりやすいように表現を変えて「本時の目標」を作る。そのときの留意点は,全員が達成できるようなレベルになっているか,教師だけでなく子どもが評価できる表現になっているか,「わかる」「知る」「感じる」等の言葉は避ける,具体的なゴールが分かりやすいか,どこまで達すれば「良し」となるのか,インプットしたものをアウトプットさせる,相手(聞き手)を意識させる(言いっぱなしにさせない),「聞き手が納得するように」etc

③次に,子どもたちに提示する「授業の目標」を作る。本時の目標に「全員が…」を加えて提示する。私たちは,6割~7割の子どもたちが理解することではなく,全員の子どもたちが理解すること(分からない子がいなくなること)を求めている。

教科による留意点などはどうか

①答えを明確に示すことができる場合は,答えはもちろんであるが,それだけでなくそこに至るまでのプロセスを理由づけてアウトプットできるよう求める。

 例.算数 ○ページの○の問題が解ける。

   理科 …について,観察・実験の結果を使って,なぜろうそくの炎が燃え続けるのかを説明できる。

②パフォーマンスを求める場合は,(こつや理由とともに)結果を求める。

 例.理科 顕微鏡を安全に使うことができる

   体育 逆上がりができる

③ゴール・フリーの課題の場合には,自分の考えとその考えを持つに至った背景やプロセスと一緒にアウトプットできるように求める。

 例.国語や道徳etc

 …について,なぜそのように考えるようになったのかその理由と一緒に,お友達によく分かってもらえるように自分の考えを説明できる

④表現教科の場合,みんなに感動してもらえるように求める

 例.音楽 …について,みんなが納得するように演奏することができる

子どもの姿の価値づけ、可視化の留意点について(タイミング、方法など)

 『学び合い』の授業は,子どもたちが課題解決を進めていくときに,どこにどのような有益な情報(自分も含めて全員が目標を達成する上で必要となる情報)があるのかをいかにキャッチできるかが重要な鍵となります。教師だけでなく,子ども自身が他の子の姿を価値づけ,可視化するようになります。「「みんな」というのは,だれがどのような情報を持っているのかを知らない人が誰もいないことである」(『学び合い』を享受しているI中学校の生徒の言葉)。したがって,全員に伝えた方が良いと判断できる情報は,そのときにその場で全員に伝わるように情報公開することが必要です。たとえば,算数の事例から,「それ、全員が知ってるかなあ。全員が知らないと困るがなあ」「これ大事なことだよなあ」「コンパスって、どこ持てばいいんだろう」「みんなに紹介したら?」「できてない人いるじゃん。やばいよ。できてない人がいるよ。」「その説明かあ。初めてすっきりしたよ。」「ねえ、だれが4番の説明したの?」(T市A先生の授業からです)。「自分一人ができてもだめなんだよ。みんなができることが大事なんだよ。今日の授業の目標はみんなができることだよ。」を繰り返します。

学び合いをしながら、お互いに理解し合っていくと、一部の子どもが残ることがある。みんなで話し合うと分からなくなるし、手もちぶさたの子どもが出てきてしまう。そんな時はどうすればいいのか。

 『学び合い』文化を享受した子どもたち,換言すれば「みんなができる(分からない子が誰もいなくなる)」の考え方を全員が共有する子どもたち,であれば,一部の子どもたちが残ったとしても関わり続けて,みんなが理解できるようになるにはどうしたらよいかを考え,アプローチします。それが「みんなが納得する(みんなができる)」ことです。・一部の理解できない子どもたちに理解してもらえるようにするにはどうしたら良いのか,その説明の方法をみんなで考える。・一部の理解できない子どもたちに理解してもらえるようにするには,誰の考え方,誰の説明の仕方がぴったりフィットするかを探し始める。一部の子どもが残るときは,「みんなができる(分からない子が誰もいなくなる)」ことを本気になって心から願い,子どもたちに繰り返し何度も求めてください。そして,授業の最後に「できた人?」と言って挙手させます。「今日の授業の目標はみんなができることだったけど,今日はみんなができなかったね。どうしてだろう?自分でよく考えてみよう」と発話します。・理解できなかった子に対して,なぜ理解できないのに関わることができないまま終わったのかを考えさせる。・理解できた子に対して,なぜ理解できなかった子がいたのに,かかわらなかったのかを考えさせる。子どもたちは有能なので,それができる力を持ってはいるが教師がそれを待てない場合は,テクニックとして「○○新聞」作りのような手法があります。つまり,早く終わって,いわゆる手持ちぶさたの子どもたちに対して自由に新聞作りを促すテクニックです。しかし,『学び合い』は文化であり,テクニックではないのでお勧めはしません。

学び合いを児童のペースに合わせてやっていると、時間がどんどん過ぎる。教師の意図に合わせ、区切るべきか。

 大切なことは,

①子どもたちに対して評価規準を分かりやすく示すこと

 「評価規準」は子どもたちに伝えるときには「ゴール」と言っています。ゴールをはっきりと伝えて,学習の流れや見通しを持たせてください。「ゴール」が分からなければ,子どもたちは何をどこまでやれば良いのかさっぱり見当が付きません。

②学習内容(範囲)と時間という要素の環境を整備する

 これから勉強する単元の内容と時間を子どもたちに対してすべて示して,何を何単位時間でやらなければならないのかを,子どもたちに対してはっきりと話します。「これから勉強する単元は○○の内容で標準で行うと○単位時間必要なんだけど,みんなだったら何単位時間でできる?」と子どもたちに聞いて実践している例もあるほどです。年間カリキュラムに則った,単元の指導計画と総単位時間を示すことで,子どもたちは単元全体をどのように学習していけばよいのかの見通しを持つようになります。

 子どもたちのペースでさせて時間が過ぎてから,教師の意図に合わせて区切るのではなくて,学習前に,自分たちが勉強する内容と,それに使える時間がどれだけあるのかを理解させて,見通しを持って目標達成に向かわせるのです。

後半に、ある程度説明ができて時間をもて余しぎみになる。みんなが時間いっぱいに課題に向かうようにするには、どんな手立てをとればよいか。

 『学び合い』は文化(考え方)であり,手立て(指導法,テクニック)ではありません。改善点は二つです。

①途中で全員が目標を達成した(課題を解決した)とすれば,目標の設定が不十分であったということです。ただ,現行の学習指導要領に則った教科書の内容であれば,そのようなことが存在することは少ないです。不十分であった場合にはもう少し高度なレベルの目標を設定する必要があります。

②子どもたちに示す授業の目標は「全員が…..説明できる(みんなができる。換言すれば,できない子が誰もいなくなる)」です。「みんなができる(できない子が誰もいなくなる)」ことはなかなか達成できるものではありません。みんなができることを本気で心から願い,繰り返し何度も強く求めてください。

全員が分かっていればまとめの必要がないが、全体が充分分かっていない場合は、教師のまとめや説明も必要と感じるがどうか。

 まとめは必要ありません。まとめを必要としないのには,3つの理由があります。

 一般に、まとめをすることによって、課題解決が図られると考えられています。しかし、子どもたちを含めて学習者の理解が実に多様であることは認知研究が解明してきたことです。つまり、40人いれば40通りの理解の仕方があります。その40通りの理解の仕方に合致させるためのまとめは40通り必要ということになります。はたして、授業の最後に40通りのまとめができるでしょうか?換言すれば、教師が授業の最後に、教師の期待するまとめをしたとして、それを理解できる子が何人いるでしょうか。おそらく、数人です。それ以外の子は分かったふりをしているだけです。まとめをすることによって40人の子どもさんたちが理解できるのであれば、なぜ従来の授業で効果が上がらないのでしょうか。

 第二に、分からない子どもたちはまとめをするまで、自分の問題解決が正しいのかを、じっとひたすら待っていることになります。それならば、もっと即時的に子どもたち自身が情報交換を進めることによって、子どもたち自身がまとめをできる環境を整えてあげた方がずっと効率的であると考えられます。

 第三に、まとめをすることの弊害の一つとして、最終的にまとめをすることによって問題解決に至ることができるのであれば、それまでのプロセスがどうであっても最後の教師のまとめを聞けば解決するということになります。子どもたちの意識の中に「なあんだ、いろいろやっても、最後には結局、先生がまとめをするんじゃないか。分からなくても黙っていれば最後に先生がなんとかしてくれる」という意識が生まれることが、子どもたちの課題解決に向かう分かろうとする行動を妨げることになりかねません。そうなると子どもたちは教師の顔色をうかがうようになります。「先生、これでいい?」が始まります。子どもたちは分からないことがあっても聞きに行こうとしなくなり、分かっても教えに行こうとしなくなります。

学び合いをする時に、課題に対する自分の考えがすぐにもてない児童が、友達から説明を受けることで、理解をすることがある。自分の考えがもてない段階でかかわってしまうと、その子の思考力が高まるのかという危惧もあるが、そういうかかわりの中で、その子なりに思考の仕方を身につけることもあるのではないかとも思うのだがどうか。

 自分でじっくり考えてどうしても分からなくなってから,他の子どもたちに聞く子どもたちもいれば,求められている解答を最初に得てから,なぜそのような答えになるのか,そこに至るまでのプロセスを逆に辿りながら追跡して考えていく子どもたちもいます。後者でも思考力は十分に育成できます。帰納的な考え方をする子どもさんもいれば,演繹的な考え方をする子どもさんもいます。それも,典型的に帰納的な考え方をする子どもさんもいればずいぶん帰納的な考え方をするけれども典型的というほどではない子どもさんもいますし,少しだけ帰納的な考え方をする子どもさんもいます。演繹的な考え方の子どもさんもしかりです。したがって,実に多様な考え方をしています。一口に思考の仕方といっても,思考の仕方は実に多様な実態であることが分かるのです。その他様な思考の仕方にどのように応じてどのような指導を施すことができるのでしょうか。私たちが考えることは,思考の仕方を育てる「最善の学習は何か?」ではなく思考の仕方を育てるための「最善の学習を考えられるのは誰か?」であり,それが出発点なのです。あくまでも,探究の方法は子どもたちが選択することが重要です。

今日の予定

 9時40分~17時20分松川中学校に出張(本学部7時10分出発),その後18時30分~21時30分臨床授業研究会に出張(01時00分帰校)です。

wisteriamkwisteriamk2009/02/19 14:41コメントありがとうございました。
この記事でゴールの作り方がよく分かりました。
『学び合い』は考え方とは言え、初心者にはこういうのがあるととっかかりが作りやすいです。

OB1989OB19892009/02/20 06:40wisteriamkさん,コメントありがとうございます。こちらこそ,コメントをくださったことに感謝しています。どのようなところに戸惑っておられるのかを具体的にお話しいただけるとお答えしやすくなります。この日のものも実際の小学校の先生方から寄せていただいたものにお答えしたものです。『学び合い』ライブ出前授業の要請のご連絡をお待ちしています。

daitouirukadaitouiruka2009/02/21 07:22うれしいです。
『学び合い』の中で交流の壁がまだ感じられ、悩んでいたとき、紹介してくださった『学び合い』を受けた中学生の言葉に「これだ!」と感じられるものがあり、試してみると全体に交流が広がっていくようになってきています。
ありがとうございます。
いつもここに書かれたたくさんのことを参考にさせていただいています。
今後ともよろしくお願い致します。

OB1989OB19892009/02/22 07:02daitouirukaさん,コメントありがとうございます。ご活用いただいて光栄です。とまどったり悩まれたりされていることがありましたら,いつでもご連絡ください。具体的に処方箋をお伝えできると思います。子どもさんたちから学ぶことがたくさんあります。N先生が立ち上げた「子どもから学ぶ教師の会」に共感するのはそんな経験を積んできているからですね。こちらこそ,これからもずっとよろしくお願いします。

o4dao4da2009/02/22 12:43貼らせていただきました。私は、芸術科目についてもっと学ぶ必要があります。①②はわかります。③は試行錯誤です。④はわかっていませんので。

わかる=実際に行ってみて反応がよいということです。

OB1989OB19892009/02/23 05:56o4daさん,コメントありがとうございます。お使いいただき光栄です。表現教科は先生方の悩みの種でもあり,なかなか目標設定に苦労するところです。「わかる=実際に行ってみて反応がよいということです」はよく分かります。実証してみて初めて納得することばかりです。

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