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上越教育大学教職大学院准教授片桐史裕です。
2016年3月まで27年間新潟県の高校国語教師を務めていました。
映画のことや,教職のことについて書いています。
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教室『学び合い』フォーラム
第15回(2019年)《海》,《山》は
2018/8/3〜4に福岡県,《日付未定》長野県でおこないます。
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2018-05-12高瀬舟

[][][]高瀬舟 高瀬舟 - Pay it Forward , By gones 片桐史裕 を含むブックマーク はてなブックマーク - 高瀬舟 - Pay it Forward , By gones 片桐史裕 高瀬舟 - Pay it Forward , By gones 片桐史裕 のブックマークコメント

第3回目は「高瀬舟」

最近は「高瀬舟」が中学3年生の教科書に掲載されている。ちょっと前,高校3年生現代文で取り扱った記憶がある。かなり難しい語もたくさん使われており,中3で扱うことに驚いた。

《読んだ印象》

 こんなに難しい語があると受け付けない子は受け付けない。

 読む子は,授業で扱わなくてもどんどん読み進めると思う。

 生徒が嫌にならないように,どのような導入をしますか?

 音読は必ずやらせる。まる読みもするし,漢字の読みの確認も兼ねて。「こころ」を暑かったときは,2時間かけて読んだこともあったなぁ。

 先に話題を提示して,「安楽死」とか。みんなだったらどうする?という様なことを話してから読ませて,興味を持続させるとか。

 「高瀬舟」の映像作品ってあるんでしたっけ?ドラマとか。あんまり聞いたこと無いなぁ。

 調べたら,あるみたい。それをちょっとだけ見せるとか。

《作品解釈》

 自分がこの作品をみんなに考えてもらいたいのは,安易に「安楽死」の是非を問うのは,なんだか違うような気がして。

 テーマは「安楽死の是非」じゃないよね。森鴎外はそういうことをテーマにしているんじゃないんじゃない?

 なぜ鴎外がこれを書いたのか?というところを考えてみて,陸軍軍医だったから,殺すのか,殺さないのか,見捨てるのか,見捨てないのかというそういう経験があったんじゃないか?と。

 冒頭で,「入相の鐘の鳴る頃にこぎ出された高瀬舟は,黒ずんだ京都の街の家々を両岸に見つつ,」とあって,最後の文で,「次第にふけてゆくおぼろ夜に,沈黙の人二人を乗せた高瀬舟は,黒い水の面を滑っていった。」とあって,どちらも「黒」という語が使われているのが気になる。

 そして,真ん中らへんに「空を仰いでいる喜助の頭から豪光が差すように思った。」とあって,ここは光に包まれているよね。

 喜助は自分で剃刀を抜く時,「今まで切れていなかったところを切ったように思われました。」なんて言っていて,これを読んだときに「ぞわ〜」ってしたんです。

 これ,言わなくてもいいことだよね。

 切ってしまったから悪いことをして,罪を得ているんだと思っている?

 剃刀を抜くと,弟が死ぬってわかってやってる?

 「ひと思いに」とか,「しっかり握って」とか,決心はしている。

《課題》

 今までにない価値観を突きつけてるよね。

 いかにも森鴎外的な作品ですね。

 究極の選択。

 私と仕事どっちが大事?みたいな。

 「舞姫」!

 「いったいこの懸隔はどうして生じてくるだろう。」とあって,喜助と庄兵衛の違いを読み取らせるのは?読み取らせて,それを対義語で表させる。辞書とか使って。ネットに接続出来れば,簡単に対義語調べられるし。「果敢」と「逡巡」とか。「自立」と「依存」とか。ほら,庄兵衛って,自分で何も決めてないじゃない。オオトリテエに任せようとか。

 この最後の1文が何を現しているのかを考えさせる。

 これってなんだと思います?

 二人は平行線,交わらない。理解できないかな?

 黒い水で,わからないまま流れて行くみたいな。

 何も結論がつかず,流れていくっていう。

 中学校での「高瀬舟」は読書単元だから,わからないまま,気になるまま,結論付けずに読んで心に残しておく,でいいんじゃないかな?

 そうすると,「安楽死」の是非みたいに,無理矢理結論付けるのは,やっぱりおかしいよね。

 高瀬舟はかなり手ごたえのある作品で,「わからないまま(わかった気にさせないまま)」というのがいいんじゃないか?という雰囲気で時間切れになった。中学生で取り扱うには,字数の関係もあり,がっつり取り組むこともできないのか?とも思った。

 高校でだったら,ところどころある情景描写と2人の雰囲気(特に庄兵衛の考え)をからめて,「メタファー」について取り扱うのも面白いかもと,授業後思った。

2018-04-27手の変幻 清岡卓行

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「中学校・高等学校授業づくり演習」第2回は「手の変幻」(評論文 高校 現代文 だいたい高2が学ぶ)だ。現代文の定番中の定番といってもいいだろう。

《不明点》

 「生臭い」って?

 ミロのヴィーナスは,腕がなくなったから美しさが普遍的になった。ということは,腕が特殊的というか,現実的。

 腕が埋まっているところが「現実的」ということ?

 「生臭坊主」って言葉があるじゃない?

 「俗世間」みたいな?

 「均整の魔」って?

 「魔」だから,魔術,魔法っていうこと?

 魔法の力で人を魅了する。

 「全体性への肉薄」?

 なんか比喩表現多いよね。

 「全体性」?「普遍性」ということ?

 部分がなくなっているのに,「全体」になるのか。

 なんと,5年前に授業をしたときのメモがここに。前の文章からの繋がりで読むと,「全体」というのは,地域や時代「全体に」ということ。まぁ,「普遍性」と同じようなことなんだけど。

《課題》

 みんなにこの写真を載せたプリントを配って,手の復元図を描いてもらおうかな?と思って。いろんな絵を描く人がいると思うし,生徒の数だけの腕が描かれるから,「いろんな腕を想像できるでしょ?」って言えるし。

 高校時代にそれ,やったような気がする。

 それで,描かれた腕のあるヴィーナスと腕のないヴィーナスを見比べて,どっちがいい?なんて比較できるし。

 それから,腕がないヴィーナスではなく,鼻や耳や目がないヴィーナスを配って,それを描いてもらって,それとの比較もできるよね。

 この文章は,「無いからいい」ということが書いてあるから,そういう「無いからいい」他の例を考えてみようっていうのを考えたんだけど。

 「無いからいい」って,例えば……?

 知らないと思うけれど,昔,岡本真夜という歌手の売り出しの時に,どんな姿形か,全く明かさないで,歌だけ世に出てきたんだけど,想像して,すっごく綺麗な人かな?なんて思ったりして。

 なるほど〜。

 この文章は,3段落になっていて,1行空いているから,段落の切れ目がよくわかる。各段落で結局同じことを言っていて,「具体がなくなって普遍的な美になった」とか,「無いからいい」ということ。各段落で様々なアプローチを使ってこのことを言っているから,「どんなアプローチで主張しているか?」ということを読み取らせるのは?

 なるほど〜。

 1段落では,ヴィーナスは腕がなくなったかこそ美しいということ。しかも偶然で。

 2段落は,復元案を考えるけれど,どの復元案もだめだよっていうこと。

 3段落は,失ったのが手だからこそいいんだよっていうこと。

 それでもこれって,随筆みたいだよね。「評論文」ってあるけれど,それほど固い文章じゃないよね。論理的でもないし。

 「評論文」と「論文」は違うからね。でも「小論文」でこんな文章を書くと,だめなんだよね。

 誤解するよね。

 私は,この文章は比喩ばっかり使っているから,比喩をピックアップして,その指している具体を考えさせたらいいかな?って思いついた。

 比喩多いね。

 例えば,「偶然無くなったよ」とか,「普遍になったよ」とか,だいたいそういうところに比喩表現を使っている。カテゴリー分けするとか。

 この人,何でこんなに比喩使うのかな?あ,詩人だし,小説家なんだ。

 そうなのか。

これを題材に選んだ受講者は,「手の変幻」といえば,「特殊」と「普遍」に分ける授業をよくやっていたけれど,他のやり方も無いかな?ということだった。

記述のある部分を具体化して理解を促す課題や,文章の構造を読み取る課題や,修辞法を読み取る課題など,バラエティ豊かな課題が出たと思う。

2018-04-19初恋 島崎藤村

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中学校・高等学校授業づくり演習を今年度から開講している。今年度の授業の進め方は,授業づくりをおこないたい題材を持ち寄り,受講者で知恵を絞り,その題材の「核」となる《問い》を考えていこうというものだ。

その授業の話し合いの概要(というか,メモ)を毎回掲載する予定だ。

第1回目は島崎藤村「初恋」(中3)

《疑問点?》

 「こころないためいき」って?

 「思いやりがない?」「自分本位の?」「気持ちに任せた?」

 「盃を—酌む」っておかしくない?普通「酒を酌む」だよね。

 「盃」は「酒」ってこと?

 「盃が君の情けに入った?」ということ?自分の気持ちが君に伝わった?

なんだか第3連だけ他と違うよね。

 「酌む」は「意を汲む」ということ?

 「問ひたまふ」の主語は「君」だよね。ということは,ここの「道」をみんなが通っているということは,自分も今,恋の道を通っているということで,両思いになったということ?

 え,「君」は,「われ」のことをまだ好きじゃないんじゃない?なんか,もてあそんでいるというか……

 「君」って,幼そうだよね。幼いのに,もてあそぶの?

 「われ」はもう,酒を飲んでいる歳だから,歳の差カップル?

 「われ」って,すごく奥手なの?

《象徴》

 「林檎畑の樹の下に/おのづからなる細道」って,みんなが通った恋の道でいいよね。

 「林檎」の象徴を考えるのも面白いかもしれない。

 これは「桃」じゃだめなのかな?

 「林檎」はキリスト教じゃ禁断の実で,アダムとイブが食べたから互いに恥ずかしがるようになったという……。

 やっぱり林檎か。「桃」だと日本じゃ生命の象徴だもんね。

 「薄紅の秋の実」だから,その「恋」も赤くなくって,色づいてきている。

 「初恋」だから?

《主体》

 「人こひ初めめしはじめなり」って……「われ」なのかな?「あたへしは—はじめなり」ってあるから,「あたへ」たのは「君」だから,「君」が主体となるはず。「人こひ初め」たのは「君」なのかな?

 「われ」の初恋じゃなくて,「君」の初恋?

 そうなると,「盃を—酌みし」は互いにやりとりしたということ?

 じゃあ,両思いになったということ?

 そうなると,「問ひたまふ」のもわかるね。純粋な見方だったら,「君」も恋をしたという捉えの方がいいよね。

《問い》

 格助詞「の」,「が」を押さえていきたい。

 中学生って格助詞「の」,「が」の識別ってやるの?

 やるみたいだよ。

 「林檎」の象徴は何か?も

 「林檎」がでてくるけれど,それぞれ違う表現だよね。

 「初恋」は誰の初恋か?ということは?今みんなが読み始めたとき,みんな「われ」の初恋だと思っていたけれど,そのうちその意味が変わってきて,面白かったから,この《問い》も面白いんじゃないかな?

 初めに提示しておけば,決めつけないで読むから,「どっちだろう?」と思いながら細かく読むよね。