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Pay it Forward , By gones 片桐史裕 このページをアンテナに追加 RSSフィード

上越教育大学教職大学院准教授片桐史裕です。
2016年3月まで27年間新潟県の高校国語教師を務めていました。
映画のことや,教職のことについて書いています。
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2018-09-12なぜ「みんなが」勉強をしなければならないのか

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ねぇ,オカムラ,なんでみんなが勉強しなければならないの?

とチコちゃんに聞かれたら,なんて答えるだろうか?これは語り尽くされたような論題だが,ふと気づいたのでメモ程度に書き記しておく。

「学校の勉強は,将来役に立たないのに,どうして勉強しなければならないの?」に対して,いろんな人が書いたものをネットで漁っていると,

  • 将来よい職に就くため
  • 論理的思考を付けるため
  • いろんな見方ができるため
  • 将来直面する問題を解決するため

などなど,いろいろ書いてある。それぞれ間違っていないことだし,きっと子どもたちにも受け入れてもらえるものだと思う。

しかし,自分は家を継ぐんだとか,自分は体を使う仕事をするから,論理的思考なんていらないとか,個人個人によって将来「役に立つ」ものは違ってくる。「難しいことは他の人に任せておけばよい。」と言われたらそれきりだ。

また,人それぞれ直面する問題も違ってくるから,勉強内容も個人個人によって違ってこないと,将来降りかかってくる問題に対応できない。「いつかどんな問題が降りかかってくるかもしれないから,まんべんなく全て勉強しておこう。」と言ったら,「いつか役に立つかもしれないから,勉強しておくひつようがあるんだよ。」という漫然とした答えになる。

私は「「みんなが」勉強*1しなければならない」という理由を考えてみた。それは,

民主国家を維持するため。

だ。もっと詳しくいえば,「権力者を監視するため」だ。日本はこの感覚がとても薄い国だと思う。権力者がやりたい放題でも,暴動は起こらず,国家は転覆せず,政権が維持される。別に暴動を起こして,国家を転覆しようといっているのではない。とりあえず多くの人たちが食えるからといって,いろんなことをスルーしてちゃだめなんじゃないの?と思う。

全ての国民がおかしいところを「おかしい!」と気づき,「おかしい!」と発言するという,当たり前のことができるようになるために,「「みんなが」勉強しなければならない。」のだ。

本来は権力の監視役はマスコミがその役を担っているのだが,新聞に金を払わず,どうでもいいネットニュースが蔓延し,フェイクニュースに飛びつくようになると,権力の監視役をするマスコミにお金が渡らなくなり,弱体化していく。権力者はそれを狙っているのではないか?とも思える。

それ以前に,アメリカや日本のある政治家は平気で「○○新聞や,○○テレビはフェイクニュースを流すから,記者会見には出入り禁止。」なんて言う。とんでもないことだ。権力のジャーナリズムへの挑戦だ。しかし,出入り禁止になると商売あがったりだから,政治家の機嫌を損ねるようなツッコミはだんだんしなくなる。泥沼だ。

それ以前に,マスコミの報道を読む力,見る力,聞く力がなければ,マスコミにお金がいかなくなる。文字を読む力,話を聞く力,数字を分析する力,社会の構造を読み解く力,自然現象を捉える力などを総動員して,権力を監視しなければならない。

それを「みんなが」やっていかないといけない。権力者はその力を弱体化して「いいなり」にしようとする。「思考停止」させて民衆を扇動するのは,権力者が民衆を戦争に引きこむ常套手段だ。

日本の場合は,2009年,投票率が小選挙区制度後最も高くなったときには政権が交代した。政治に関心が高くなると政権交代が起こる。政権交代させたくない場合はみんなを投票所に行かせないという方法が効果的だ。ということは,政治への無関心を維持させることが最もよい方法となる。



「スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む*2

には,次のようにスウェーデンの教科書の記述が紹介されている。

メディアが,あなたやあなたの価値観,そしてあなたの意見に影響を与えるのと同じように,あなたも自分のためにメディアを利用することができます。

《中略》

以下に,あなたが世論を形成し,それによって決定に影響を与えるためのコツを示しておきます。

・あなたの友人や親類から,署名による支援を集めましょう。

・地方の新聞に投書しましょう。

・フェイスブックでグループをつくりましょう。

・人々を集めてデモをおこないましょう。

・責任者の政治家に,直接連絡を取りましょう。

pp.42-43

日本の小学校の教科書で,こんなことが書かれてあるものはないだろう。日本の場合,「民主主義」はすでにあり,いつもあるもので,勝ち取るものではないと,みんなが思っているし,民主主義が完全に失われてしまうと,取り返しが付かないことになるということを,肌で感じている人は少ないように思われる。

そしてこれは「みんなが」やらなければ意味がない。みんなが権力を監視し,反対する場合は「ノー!」と言えるようにしないと,「ノー!」と言わない人が権力に操られてしまう可能性がある。

「ノー!」と思ったら,それを訴えなければならない。同書籍には,こんなことも書かれてある。

影響を与えたいことについて,あなたが知識を持っていることを世に示すことで常によい効果が期待できます。そのことを,頭に入れておきましょう。

とはいえ,学校の職員や両親,近所の人々,コーチ,そして最終的に政治家を味方につけるためには,誤字などの誤りがなく,正しく書くことが重要となります。あなたが,しっかりと準備が整っており,ちゃんとした文章が書け,そして自分の意見を冷静にしっかりと伝えることができるということを示しましょう。

p.144

国語」の目的をこうもシンプルに書いてある教科書(や参考書,解説書)が日本にあるだろうか?

「全員」で権力や社会の監視役をしなければ,世の中はよくならないのだ。これが私の考える「「みんなが」勉強をしなければならない」理由だ。

*1:「勉強」のここでの定義は,義務教育の勉強とする。

*2:ヨーラン・スバネリッド 鈴木賢志 他翻訳 新評論 2016