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Pay it Forward , By gones 片桐史裕 このページをアンテナに追加 RSSフィード

上越教育大学教職大学院准教授片桐史裕です。
2016年3月まで27年間新潟県の高校国語教師を務めていました。
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2018-06-07東下り(伊勢物語)

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中学校・高等学校授業づくり演習の6つ目の題材は「東下り」高校1年生古典(国語総合)の定番中の定番教材だ。私も高校時代に教育実習生から習った記憶がある。

題材提供者は,「歌物語で,歌と地の文の取扱いのバランスや,高校生にとっては初めての古文和歌ということもあり,訓詁注釈だけやっていれば時間は過ぎるのだが,それだけでは面白味がない。」ということで選んだそうだ。

《不明点など》

 この「東下り」って,何時間で授業をするものなんですか?

 指導書だと配当は3時間になっているけれどね。

 あ,私は高校教師時代,9時間かけてた。3時間じゃ終わらないよね。だいたいこの和歌の説明だけで1時間くらいかかるもん。

 文法をだけをやっていたような気もします。

 あと和歌の修辞法も。

 盛りだくさんすぎますよね。

 盛りだくさんすぎるんですけれど,音読をガンガンやらせて,暗唱させていたから,むしろ,この「東下り」さえ覚えておけば,他に使えるというか。

 「唐衣」の歌なんて,和歌の修辞法がほぼ詰まっているから,この歌さえ覚えておけば,修辞法が理解できますよね。

 しかし,本当に情報過多だから,聴いている生徒は本当にイヤになりますよね。


 新潟でこれをやっても,八橋とか,駿河とか,富士山とか,なんか,土地勘がないから,全然イメージできないというか。

 そうですね。

 きっと東海に住んでいる生徒だったら,どれかイメージつくから,自分のものになるというか。

 富士山だって,新潟の人は見たことはあるんだろうけれど,どんなだかピンと来ない。

 紀行文っぽい文章ですよね。紀行文って何をポイントにやればいいんでしょう?

 かきつばただって,昔はドブ川とか,湿地帯とか平気でそこら辺にあったけれど,今はみんなコンクリートに覆われて,生えてないですよね。アヤメとか,そういう花って見かけなくなりましたよね。


 京にいることができなくなったって,どういうことかわからないですよね。

 前の文章の「芥川」で設定を理解しないと,なんで「東下り」なのか,わからないですよね。この女の人と駆け落ちしたから,京にいられなくなったって。

 東に逃げているっていうんだけれど,東京に近づいているから,都会なんじゃないか?って。

 今の感覚だとそうですよね。この当時は人が住むようなところじゃないというか,身の安全が確保できないというか,京の人にとっては未開の地ですからね。その感覚もわかってもらえないと。


 「時知らぬ」の歌って,単に富士山見てびっくり!ってだけでしょうか?

 そうですね。他は京に置いてきた女性を思っている歌なのに,どうしてこれだけ「富士山綺麗だな。」みたいな内容なんでしょう?

 それほど富士山に感動したということなんでしょうか?

 「鹿の子まだら」ってありますが,この挿絵を見ると,どこにも「鹿の子まだら」になってないですよね。頂上が真っ白に雪をかぶっていて。

 この下に生えているのは梅ですか?なんだか,梅が咲いているところでほっとしている絵みたい。

 都落ちをしている「悲壮感」なんてないですね。この絵は。


 「駿河なる」の歌では,「うつつにも夢にも人にあはぬなりけり」っていうのは,修行者に会ったから,びっくり!みたいな歌かな?

 現実にもほとんど人がいないところで,山賊かと思ったら見知った人だったという驚きでしょうか?

 それでも,夢にその人が出てきていないということは,「あなたは私のことをもう思っていないんですか?」っていうことでしょうか?


 この「東下り」の感覚って,高校生にはわからないですよね。難しいというか,現実味がないから。今の旅行と全く違うという。

 ほら,「電波少年」の,南米編みたいな,ヤギ連れて荒れ野を歩いて行くという。

 ん?

 「電波少年」わかります?

 猿岩石のやつ?

 そうそう。猿岩石のやつは,結構街があるところを通って行くから,そっちじゃなくって,南米編は,荒れ果てたところをとぼとぼ歩いて行くという。

 なんか,今まで住んでいるところに住めなくなって,流されていくっていう感覚,憧れるというか,その「無用感」ってわかるんですよね。大人になると。「自分は必要無いんじゃないか?」っていう「えうなきもの」の感覚。

 ……


《そろそろ課題に……》

 歌を自分たちで解釈してみよう……とか。文法書を駆使して。

 歌物語だから,歌中心だから,歌から見ていけるような課題がいいですよね。

 先ず歌を解釈する。地の文の解釈はあとにするとか。

 各歌で描かれているのは,地の文のどこにある?なんていう課題がいいんじゃないでしょうか?たとえば,「はるばるきぬる」というのは,どうして「はるばるきぬる」なのか,地の文から見つけてみる。他の所もそんな感じで。

 なるほど「京にはあらじ,東の方に住むべき国求めにとて行きけり。」だからみたいな。

 そうすると和歌を読んで,地の文を読みますよね。

 歌物語の成立の順番ですね。

高校教師時代は,この教材になると,ルーティーン的に授業で扱うことが決まっていて,「古文の世界はこんなに面白く,表現がこんなに工夫されているんだぞ!」と,情報過多で扱っていたのだが,「東下り」の真の面白さに迫れてなかったと,今気づいた。対話することでこれほど深く考えることができるのかと思った。